振り返ってみると今年は、春先の低温と日照不足、
夏の延々と続く猛暑等で、農作物には荷酷な天候の推移でした。
もう2〜3℃気温が上がって37〜38℃以上の酷暑が続けば、
多分(ブドウを)仕上げることはできなかっただろうと思います。
葉の状態をみても、それほどに今年の暑さは
ブドウができるかどうかぎりぎりの限界線上にあったと実感しています。
農作物は、天候が順調に生育する範囲内でないと どんな技術力があっても無理です。
人間の力などは、自然の猛威のなかでは、無いに等しいー
このことが職人としての私のプライドを著しく傷つけ続けます。
近年、年ごとに予想もしない、経験したこともない天候に
見舞われることが急加速してきています。
ブドウの生産ができなくなるかも知れない天候異変への不安が、年々増大してきています。
落葉果樹の生育は、最低気温の推移が鍵を握っています。
生育のその時季折々に必要な最低温度を確保できないと
品質の低下を招いたり、最悪ならできなくなったりします。
温暖化ばかりが強調されていますが、寒暖の差の大きさが
近年の天候のもう一つの大きな特徴です。
安定生産と品質向上を目指すなら、加温設備を伴う施設栽培でないと
もはや無理ではないかと思います。
問題は生産コストが上昇して、この不況下を乗り切れるかどうかということです。
一昨年秋からの際立った不況は、消費の低迷を一気に加速させ
高単価の物が極端に売れなくなってきています。
売れないと市場価格は下がり続けます。販売価格が生産コストを下回り続けると
経営を維持できなくなるのは必至です。
不況のしわ寄せは中小零細企業とか農業などの第一次産業の弱いところに集中してきます。
農機、農業資材・燃料等の高値は市場価格からすると暴力的です。
生産コストを下げようとすると、原始農業にでも帰らない限り無理、
そこが大きな壁となってきます。
米価も予想通り、所得補償政策が引き金となって、過激に下がっています。
米作に必要な農機だけをみても、米価からすると天文学的な値段で、
もはや米作経営は不可能という所まで来ていると思います。
総じて、日本の農業は経営難に陥っています。
天候不順、販売不安、TPP等自由化への不安、獣害等々まさに四面楚歌の末期的状況です。