ここ数年春先の寒暖の差が年毎に激しくなって来ていますが、暖の方に上手く乗せるようこまめに加温の温度調整をして、ここまではスケジュール通りの生育状況です。
写真はピオーネですが、今年は半分くらいは1キロの房にするつもりです。もう少し花穂を小さくすると穂先までの着果率が高くなりますが、ここまで大きく取るとどうしても穂先の着果率は悪くなります。房の上、枝に近いほど着果率は高いのですが、一車に付く粒数が先端部分の数倍になり、摘粒、房作りの手間が増大するため、先端部分まで着果させるよう一回目のジベ処理には腐心します。
ピオーネは15年ほどで初代は終わり、現在はより優良系に選抜された二代目ですが、先代では1キロの房にすると着色が難しかったのですが、二代目は昨年3割程度1キロ房にしたのですが、着色、仕上がりとも難なく、同じピオーネといえども能力の違いは隔世の感がありました。それを見届けて、昨年から新たなピオーネ史が私の中で始まったようです。
品種の限界ぎりぎりを攻めるような作り方は、わざわざ難しく作っているようなところもあるのですが、このことは私のブドウ作りでは骨肉化してしまっていて、これを変更するようなことはもはや無いのだろうと、自分の内では思いは定まっています。
ブドウの販売期になると、時折全国の何処かから問い合わせの電話が入ることがあります。今出荷しているのはピオーネだけですと言うと、ピオーネは何処にでもあるから結構ですと言われることがあります。何処にでもあるわけないだろこのレベルのピオーネが、と本当はカチンと来ているのですが、そこはぐっと我慢します。市場でどれほどの実績があっても、それをゼロにして直販に取り組んでいるのだし、食べなきゃわからない、始まらないと思っているからです。
私が自分の作るブドウにどれほどの自信とプライドをもっているか、正味語れば、食べたことがない人なら唖然とするだろうことはよく分かっています。
私が語るのではなく、ブドウが語れば良いのです。
何故それほどピオーネにこだわるのか、それはピオーネが何処にでもあるからです。
目新しさや珍しさではなく、何処にでもある品種を何処にも無い品質レベルに作ることにこそ、職人魂が疼くからです。
私はこれはと思う新品種にどんどん取り組み続けていますが、20年来のピオーネのお客さんは、やっぱりピオーネが一番良いと言い続けています。
私は苦笑いしてしまいますが、それは後になるほど利いてくる、今では一番嬉しい言葉です。