写真は加温一番手園のゴルビーです。同じ園地の伊豆錦、加温二番手園のピオーネもほぼ同じ程度に開き始めています。
年が明けるとまず剪定をして、各ハウスを順次ビニール被覆したり、忙しく動き回ってはいるのですが、本年度作の始まりはやはり新芽が開き始めたこの瞬間です。二十年以上同じサイクルを毎年繰り返してはいるのですが、去年出来たからといって今年出来る保障はどこにも無く、一年一年が常に未知なる新たな年となります。一年生作物とは違ってブドウは果樹であるため、樹を一度傷めると次の年から品質が急降下して、成木ほど回復不能となるため、連続性ということによほど留意しなければなりません。
ブログに昨年までの三年間のブドウの成育状況を記していますが、それを見ると一年一作が如何にはらはらどきどきの連続であるかがよく分かります。
以前あちこちから一斉にブドウ作りの名人とか言われた頃がありますが、どれほどのた打ち回って作っているのか知らないからそんな脳天気なことがいえるのだと、内心苦々しく思っていました。
私のブドウ作りに名人芸的なものは一切ありません。より高きを目指して、心身ともへとへとまで酷使する、むしろ愚直なのだと思うこともあります。
一つ一つの作業に思いを籠めて、出来上がった一房のブドウは私の思いの総和として結晶しているはずです。私がブドウを語るのではなく、ブドウが私を語らねばおかしい、くらいに思っています。
十五年来の付き合いになる東京の業者さんに以前、「これ以上のブドウを作ってくださいと言うことはありません。出来るなら少しでも楽に、少しでも長く作ってください。」と言われたことがあります。「気持ちは嬉しいですが多分無理でしょう。より高くを目指し続ける以上キツサは増すばかりです。目指さなくなったら職人として私は終わり、ただの生産者に後退するだけです。プライドを持てないような物を作るくらいなら、辞める方がさきですよ。」と答えながら、自分という人間のしんどさを嫌に重苦しく感じていました。
主人が1月下旬に心臓にステントを2ヶ所入れました。2月末の検査では異常なしでした。やっと晴々した気分で動いています。無理をしなければ大丈夫との事ですが、無理しかしてこなかった人なので心配です。まあぶどうや庭の果物に癒されているようなので黙って見ていますが・・・。