現在私の園地にあるブドウは、販売5品種と試作育成中の4新品種の計9品種ですが、振り返ってみると、商品化して残る品種よりは、商品化せずに消えていく品種のほうがはるかに多いようです。
藤稔、アモーレ、高妻、バラード、ベニバラード、ルーベルマスカット、ウインク、オリエンタルスター等、いずれも成木になるまで育てて、品種の可能性を見届けてそれ以上作ることを断念したのですが、その理由を総合すると、自分が作りたいのはどういうブドウであるのかがよく分かります。
先ずその品種独自の個性があるかどうかということですが、私はやはり、粒の大きくならない品種は結果的には蹴ってしまいます。バラード、ベニバラード、ルーベルマスカットなどが、その理由が主で止めたということになります。
藤稔は噛んだらプシューと汁気が広がるだけの、果肉の質感の乏しいブドウで、最初から大嫌いだったのですが、親父が植えていたため、嫌々7年間は作りました。私は果肉の質感を重視していて、噛んで音がするほど果肉の質感がある品種を選びます。
高妻も7年ほど作ったのですが、良い品種なのだけど、ピオーネ、伊豆錦と同じようなのが3品種も要らないということで止めました。伊豆錦と高妻とどちらを残すか、私の味好みで伊豆錦を選んだということです。
折角6,7年かけて成木にして、これから本格化するという時に、何故伐るのかとよく言われましたが、その品種の可能性は成木にしないと分からないから、そこまではどの品種も作るということです。ブドウの果実は本格的に成木域に入った途端、過激に変わります。そこまで作らないとその品種を知らずに見切りをつけることになり、作ったということにならないと思います。苗木を植えつけて5年から7年かけて成木にして、その品種の可能性を見極めて、それから本格的に作るかどうか決めるというのは大変です。
最近では試作といえども10本程度数をまとめて植えつけています。試作してみてよければという方式では、一品種登場に10年近くもかかり、私はそんな時間的猶予は残されていないという年齢域に既に入っています。
現在育成中の4品種も、商品化されるかどうかは不明です。成木域に入った時点で、私の気に入るものになるかどうかです。
新しい品種で新たな可能性に挑み続けることが、物づくりとしての意欲を掻き立て続けます。成木に育てては切り倒すことを繰り返しているように見えても、明石園芸仕様の基準に達するかどうかということであり、そこそこのレベルでは商品化しないということです。