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2019年04月05日

最北へ

雪の原野を倒れるまで歩き続けたい、いつの間にか根付いたそんな願望が次第に成長して、時折熱い疼きとなって私の内部を駆け巡るようになっていました。
学生生活2年目の12月、アルバイトでどうにか旅費を作って、意を決するように北海道宗谷岬へ私は旅立ちました。京都から稚内までは鉄道で急行などを乗り継いでも二晩三日は要したような記憶がありますが、50年近く前のことだから定かではありません。
日本海側を北上しながら東北に入ると空は黒々雲に覆われて、白く波立った海は牙をむいて襲い掛かるとてつもなく巨大な猛獣のようにも見えた。車窓に映った自分が固まったような表情でこちらを見返している。なんて暗いのだと自分でも思う。東北でこれだと北海道の最北端宗谷はどうなのだろうと胸騒ぎもします。
列車を乗り継いで2日目になると寝不足もあってさすがに疲れます。途中下車なしの稚内までノンストップの旅だから猶更です。京都を出てどれくらいの時間を経て旭川に辿り着いたのか分かりませんが、仕事帰りの勤め人に交じって普通列車に乗っていました。二人掛けが向かい合った座席にあまり空席もなく、私の向かい側は慎ましやかそうなお姉さんが腰かけていました。
「旭川は日本で一番冷え込む処だと言われているけど本当?」と多分私が話しかけたのだと思いますが、彼女は首を横に振って「私の住む名寄の方がもっと冷え込む、氷点下30度以下に下がることもある。」と寒そうな顔をする。「寒くて寒くてあんまり寒いと心も凍ってしまいそうになるのよ。」彼女はその寒さの中に居るような表情を見せたが、私は彼女のずっと向こう、先ほどこの車両に入ってきた熊のような大男が、多分酔っ払いなのだろう、乗客に絡みながらこちらに近づいてきているのを見てる。ここへ来て彼女に絡んだらただではおかないぞともう心は構えています。「こんな寒い処に住んでいると、暖かい処に住んでいる人が羨ましいし、あの活気が私達にはない異質さで、怖いとさえ感じるの。」「だったら関西人は一番怖いかも知れないね。」と私が言ったとき大男が彼女に倒れ掛かるように絡みついた。
「おい、おっさん、お前ぶっ殺すぞ!頭かち割ってザクロにしたろか!」大男の胸倉を掴んで彼女から引き離して凄むと、私の目が余程殺気立ったのか、大男は一瞬でしゅんと凋んですごすご車両から出て行った。見ると彼女は蒼ざめて震えているようだ。言葉を掛けようとすると、彼女が怖がっているのは酔っ払いではなく私だと気づいた。ヤクザとでも思われたのかも知れない、列車が名寄に着くと彼女は逃げるように降りて行った。なんでこんな馬鹿馬鹿しいことになるのか、世の中を嫌っているから、世の中に嫌われてもしようがないと思ってしまう。
翌日やっとというか、とうとう稚内駅に着いた。雪は降っているが小雪で空は明るい。宗谷岬行きのバスに乗り込むと、明るかった空が次第に暗くなり、途中から吹雪、猛吹雪となり宗谷岬に近づくほどに視界は閉ざされた。終点宗谷岬は猛吹雪で視界は無いに等しい。バスを降りると数秒で雪柱になり、息をするのも困難だ。バスの待合室に飛び込んで難を逃れたのですが、雪の原野を倒れるまで歩き続けたいなど、なんて現実知らずの妄想だったのか、バスを降りた一瞬で自分の馬鹿さ加減を強烈に悟りました。結局乗ってきたバスが折り返すのを待って稚内に引き返したのですが、笑い話以下のお粗末さだったのは間違いありません。
稚内市内に戻ってラーメンをたべていると、森進一の歌が流れていました。好きな歌手でもないのですが、こんな北の最果てでラーメンを食べている自分が浮き彫りにされるようで、何故なのかわかりませんが、涙が溢れてきます。名寄の彼女は心が凍りそうになるといいましたが、誰のどんな声も届かないほどに凍ってしまっている自分に、私はただ立ち尽くしているだけだったのです。
posted by 明石 at 20:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 園主の独り言
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