検索ボックス

<< 2019年10月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
最近の記事
最近のコメント
天山 何処までも大きく by 明石園芸 園主 (07/19)
天山 何処までも大きく by 小西俊雄 (07/19)
天山 何処までも大きく by 小西俊雄 (07/19)
天山 裂果とは別に by 瀬戸口 光弘 (07/02)
苗床準備 by budou83 (01/13)
最近のトラックバック
カテゴリ
過去ログ
Powered by さくらのブログ

2019年03月28日

金沢の女

北村が関西大学だったので時々ふらり京都に来ることがあった。下宿の部屋に居ても面白くないので、どこかへ行かないかということになり、美人の多い北陸金沢に決めました。二人とも学生で所持金は乏しいのですが、往復の運賃と飯代くらいは何とかありそうで、後の展開はパチプロまがいの北村が金沢で稼げるかどうかです。
朝金沢に着いて、パチンコ屋をチェックしながらぶらぶら金沢城公園あたりまで来ると、ほどなく開店という時間になって、来る途中決めていたパチンコ屋へ北村は戻って行った。私は金沢城付近の芝公園で寝ると決めていました。春だったか秋だったか忘れましたが、暑くも寒くもない戸外が最適の季節だったのは間違いなく、穏やかによく晴れた日、木陰で芝生の上だと夕方まででも寝られそうです。
周りを見回しても芝公園に人の姿はなく、木陰で芝生の上に寝転んで思い切り手足を伸ばすと、あまりの気持ちよさに日ごろの鬱々した気分も消えていました。下宿では眠りさえ四方八方から脅迫されて神経衰弱気味なのですが、知らぬ土地で快適な環境に解放されて、心地よい眠りにすんなり落ちました。
久々の快眠でどれくらい時が経ったのか、何かの気配でふと目が覚めました。寝ている私のすぐ近く女の人が芝生に足を投げ出して座っている。眠りが深かったようで私も咄嗟の状況判断が出来ません。少し微笑んでいるような優し気な彼女の目に、「ここはどこ?」と聞くと、「芝公園よ。」と返ってきました。「違うよ!どこでもないわまだ、だよ。」と突然自分でも何を言い出すやらですが、「谷川俊太郎ね。」と彼女。「あんたは誰?」と言うと、「誰でもないわまだ。」と彼女。何か嬉し楽しくなってきて私は笑っている彼女に、「ここがどこかで、あんたが誰かになるためには、どうすればいいのだろう?」と言うと、「それはあなた次第よ。」と彼女。
こんなほんわか優しそうな美人が、何故わざわざ寝ている私のすぐ側に腰を下ろしたのか、それは今考えても不思議です。彼女は北國新聞社の社長秘書で、昼休みで芝公園に寛ぎに来たそうです。出会った一瞬で触れ合えるところがあるのを感じ取りながら、好みのタイプであるがゆえにその先に私は進めません。就職はしたくないし生活に夢も望みも未来志向が全くない人間に恋愛は不可能で、好みのタイプほどに関わるのを避けてしまいます。
芝公園の入口付近に北村が見えた。宿泊費を稼ぎに行った友達が帰ってきたと言うと、彼女は立ち上がって帰って行った。お互いに名前とかを教えることもなく、その場限りの出会いで終わらせたのですが、どこかに切なさが疼くような心残りはあります。そんな気持ちを処理するのにも慣れていますが、ふと思うのは、仮に神様が出会いを仕組んだとしても意志が無ければ何も生まれない、ということです。「あなた次第よ。」と彼女の言葉が胸に刺さっているのに気付いて、「痛っ!」と顔を顰めました。
posted by 明石 at 13:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 園主の独り言
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/185778134

この記事へのトラックバック